茶の湯の道具やお茶には「〇〇御好(おこのみ)」「〇〇好み(ごのみ)」といった「好み」ものに頻繁に出会います。
「会記」を拝見すると、そのオンパレードです。
※「会記」とは、例えば大寄せの茶会の場合、その茶席で使われている道具の内容を記した一覧表のようなものです。道具、道具銘、「〇〇御好」、作者名、窯元、製造元?(お菓子、抹茶)などが記されています。茶会の趣旨や意図が伝わりやすいように「会記」が用意されることが多いです。
そもそも、「好み」とはどういうものを指すのでしょう?
今まで出会った「〇〇好み」の道具たちを頭の中でジャンル分けすると、なんとなくこんな感じに分類されるかな?とわかるけれど…わかるようでわからない。その定義をしっかり説明してくれている本に出会ったのでご紹介したいと思います。
『好みと写し ーオリジナリティとコピーへの視線』より
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「利休好」(りきゅうごのみ)には、大きく分けて3つの種類があります。
①=”利休が職人に指示して作らせたもの”。当時の職工であった与次郎の釜、あるいは長次郎の楽茶碗などがこれに相当します。
②=”利休が見立てて用いたもの。”本来茶道具ではなかったものを転用した例で、たとえば魚籠の花入などがこの範疇に入ります。
そして③=”利休が自分で制作したもの。”利休が自ら削った茶杓や、竹を切り出してこしらえた竹花入などが現存します。冒頭で紹介した2つの茶碗のオリジナルはつまり①に該当するわけです。
そして「利休好」の形のことを「利休形」(りきゅうがた)といいます。
茶味空間。茶で読みとくニッポン 千宗屋著 マガジンハウス 2012(P.12〜)
千宗屋さんの本は、以前の投稿「茶碗を”時計回り”に回すわけ」で紹介した本にしても、疑問のこたえを見つけることができたり、とてもわかりやすく読んでいて面白いです。
特に、「茶 利休と今をつなぐ」新潮社は「もっっと早く出会いたかった!!!」と読み進めながら何度思ったことか!
これから茶の湯を始める方や興味を持ち始めた方に、「まず読んでみて!」とお勧めしている本です。新書なので手に取りやすいですし、ぜひ、オススメ。
本題に戻りまして、「利休好」で「好み」の種類がわかりました。
①=”利休が職人に指示して作らせたもの”
は今で言うと、プロデュースして職人に作ってもらった作品ということでしょうか。
ここで疑問がでてくるのが、茶銘に関する「〇〇御好」です。
お茶屋さんによっては、既にあるブレンドに別の茶銘を名付けてもらうことで「〇〇御好」とするところもあります。『以前は、「△△御好」という銘がついていたけれど、新たに「◇◇御好」の銘を賜りました。』というように。
また、同じブレンドの抹茶に対して「△△御好」「◇◇御好」と異なる方のお好みとして銘がついていたり。「自分の流派の銘の抹茶をさがしていた」という方には、銘だけを見たらそれが叶うので、よしとするのでしょうか…
ただ、この本を知るまでは、私はこのことがとても疑問でムンムンとしていました。また、上述の「好み」に関する分類のどれにも当てはまりません。…必ずこの三種類のどれかに分類する必要があると固執するわけではないですが、やはり「好みもの」はこういうものなのかな?と今まで拝見してきたものの中でも、茶銘だけはどうにも異質に感じてしまっていたので。
今は、そう感じてはいるけれど、そういうものとして納得することにしました。
これで、茶の湯の「好み」とは何か?を整理して理解することができました。
それとは別の、普段の日常で使う「好み」。
自分がセレクトするもの。
使っていてわくわく気分があがるもの、ほっこりするもの、安心するもの、自分にフィットするもの、ないと困るもの、美味しいと感じるもの…
なにも縛られず、ただただ自分が好きなもの…
これからも「Kco好み」を探していきたいと思います。