お茶屋さんに”大福茶”(おおぶくちゃ)が並ぶと、「今年も残りあとわずかだよ」と言われている気分になります。
それから少し粘って師走を迎え、「よしっ!」と年末を迎える心構えのスイッチを入れるつもりで、毎年”大福茶”を購入します。
今年は12月半ばに、一保堂茶舗さんの大福茶を買いました。
おおぶくちゃ(大福茶・皇服茶・王服茶)とは?
大福茶の習わしは、平安時代の庶民の茶に関する伝承から来ています。
村上天皇の時代に京の町に疫病が流行りました。民衆に人気のあった空也上人(903-972)が、中に梅干し・結昆布を入れた茶を仏前に献じ、それをまず天皇に、それから病者にも授け念仏を唱えられたところ、たちまち病魔が静まったといいます。空也上人ゆかりの六波羅蜜寺では、無病息災の皇服茶として伝承され、現在も正月にこの茶を人々に提供しているそうです。
参考:六波羅蜜寺HP「皇服茶」
日本茶インストラクター(テキスト)第1巻 2011(P18)
この伝承に因み、京では大福茶(おおぶくちゃ)を新年に、1年の無病息災と幸せを願っていただく縁起物として飲まれています。
私は今年の厄払いのつもりで年内に開けて既に戴いてしまいましたが。
お茶屋さんによって「大福茶」の商品は様々で、玉露や煎茶の茶葉を使ったり、玄米茶であったり。梅干や結昆布を入れたり入れなかったり…バラエティに富んでいます。
今回購入した一保堂茶舗さんの大福茶は、上等な番茶を使った玄米茶です。玄米の割合が少ないので、柔らかな番茶の味わいにほのかな玄米の香りが残る、玄米の主張が穏やかな味でした。
(左利きなので、それ用の急須を使っています)
一保堂さんの番茶は普段は”若柳”という緑色の番茶を頂いているのですが、この大福茶も3煎目まで味の変化を楽しめます。
お葉がしっかりしているので、3煎目まで淹れたあと「もう全力出し切りました!」とでも言われているようにお葉がしっかり開いています。その姿を見ると、「よく頑張ってくれました。ありがとう!」という気分になります。
今年も残すところあとわずか。
年の暮れに向けてギアを上げ、良い年を迎えたいと思います。